鳥取砂丘

 砂丘というと鳥取砂丘が有名ですね。日本最大の砂丘ということですが、砂というものは非常に面白い地形を作ります。初めての海外旅行で訪れたオーストラリアの
シンプソン砂漠も赤茶けた細かい砂が一面に地平線まで広がって荒涼とした景色を見せてくれていましたが、さすがに島国日本の内陸にはあんな広大無辺の“砂漠”はありません。
 その代わり、日本の海岸には“砂浜”の規模がさらに大きくなった“砂丘”が幾つか知られていますが、その最大のものが鳥取砂丘というわけです。ちなみに日本には「三大砂丘」と呼ばれる砂丘があるのを御存知ですか?一つはもちろん日本最大の鳥取砂丘、次に千葉県の九十九里浜、しかし三番目には鹿児島県の吹上浜砂丘と、静岡県浜松市の中田島砂丘が候補に上がっていて、必ずしもどこが「三大」に相当するかには諸説あるようです。

 考えてみれば、「世界三大美港」とか「世界三大瀑布」とか「日本三大夜景」とかありますが、誰でも自分の地元が「BIG 3」にランキングされると嬉しいので、かなり身贔屓や欲目が入ってしまうようです。
 果ては「世界三大美女」にクレオパトラと楊貴妃と共に小野小町が入るという説もありますが、やはり男性としてはこの3人の写真(水着とまでは言わないが…)くらい見せて貰ってから判定したいものです。
 ところで脱線ついでに、「世界三大行進曲(マーチ)」として、アメリカの「星条旗よ永遠なれ」、ドイツの「旧友」、日本の「軍艦マーチ」がランクされると信じている日本人は多いようですが、これも身贔屓の一つであって、世界中の軍楽隊がレパートリーとして持っている楽譜の中に前2者は入るらしいのですが、残念ながら「軍艦マーチ」の譜面を常備している所は少ないそうです。

 さて砂丘の話に戻りますが、私個人としては、浜松の中田島砂丘をぜひ三大砂丘に入れて頂きたい。この砂丘については、またいずれ機会を改めて御紹介したいと思います。

 これが鳥取砂丘の写真
です。晩秋の空気の乾いた朝だったので、広大な砂丘の表面には砂と風が織り成す「風紋」がみごとに描かれていました。

 砂は風に吹かれてさまざまな紋様を描き、一瞬として同じ模様をとどめていることがありません。風向、風速によって微妙な波状紋がまるで生きているかのように刻々と姿を変えていく様子は本当に不思議でした。砂の表面に手をかざして風を遮ると、その部分だけがまた周囲とは違った模様に変化していく。まさに人の心もこのようなものかも知れません。


 砂と言えば思い出すのが、松本清張さんの名作「砂の器」がありますね。先日TVドラマにもなったので結末を御存知の方も多いでしょうが、やはり本格的な推理小説なのであらすじを書くのはやめておきます。ただハンセン氏病患者に対する偏見と差別と迫害がみごとに描かれた社会派の作品でもありました。
 松本さんの意図は判りませんが、風に吹かれて微妙に作られては壊れていく砂のように変化する人の心模様を象徴する題なのでしょうか。この小説、原作も良いのですが、私が本当に感心したのは1974年に松竹映画で製作された同名の映画(野村芳太郎監督)です。2時間前後の作品の中に、松本清張さんが構成した筋書きが過不足なく盛り込まれているうえ、親子が海岸沿いを旅して放浪する光景が観ている者の視覚に直接訴えかけてくるのです。
 ある小説などが映画化された場合、よく原作を先に読むか、映画を先に観るか、という議論になります。私は迷わず、原作を先に読むべきであると答えますが、この「砂の器」に関してだけはどちらでも良いと思っています。松本清張さんの原作「砂の器」も名作なら、野村芳太郎監督の映画「砂の器」も名作であり、両者はみごとに重なり合っているからです。つまり原作に書かれた必要な場面や大切な主張はすべて映画に盛り込まれており、映画で観た内容はすべて原作で味わい直すことが出来るのです。
 原作と映画のこれだけ完璧なコンビネーションは他にあまり例が無いのではないでしょうか。映画では原作の肝心なシーンが省略されていたり、逆に映画監督の過剰な思い入れが原作の味わいを損ねていたりして失望することも少なくありません。日本映画のビデオソフトやDVDは外国物に比べて高価なのですが、もし最後に1本だけ日本映画を見せてやると言われたら、私はこの「砂の器」を観たいものです。


               帰らなくっちゃ