大阪
大阪は我々関東の人間からすると一種の外国のような街である。今年(2003年)は18年ぶりの阪神タイガースの優勝で盛り上がっているが、ではこの17年間は静かだったかというと、阪神が優勝しなくてもこの街はいつも盛り上がっているのである。そのエネルギーに我々関東人はとても太刀打ち出来ないものを感じる。羨ましさと同時に恐れを抱くこともある。娯楽小説などで、金を騙し盗ったり、女をコマして売り飛ばすような登場人物は大抵が大阪弁を喋る。その方がいかにもワルというイメージがピッタリくるのである。
どこかに魔窟でもありそうな大阪の街を、私も学生の頃は何となく敬遠していた。しかし最近はこの違いが面白い。東京と大阪は明らかに違う文化背景を持っているのだ。外国でも、例えばシドニーとメルボルン、北京と上海、ワシントンとニューヨークのように対をなす大都会があるが、日本の場合は東京と大阪が最たるものである。雑誌などでも時々「東京vs大阪」などという特集が組まれることがあり、両大都市の違いについて何か新しいことを付け加えるのはもう難しい。
しかし最近(トラ縞のユニホームを着たグリコの看板を見ればいつのことだか一目瞭然だが)、大阪の街を歩いていて、まだ誰も言っていない(と思われる)両者の違いを見つけた。それも大阪にとってポジティブなことである。(私のような三代目の東京人にとって大阪の良さが目に付くのは珍しいことだ。)
難波から心斎橋あたりを歩いていてふと気付いたのだが、歩きながら喫煙するバカ(アホ)が少ないのである。東京の渋谷・新宿・池袋あたりを歩いていると、他人の迷惑も考えずに雑踏の中でタバコを吸う人間が20〜30人に1人はいる。喫煙する手を下に降ろせばタバコの火が幼児の顔の高さにくることなど気付きもしない。特に20歳代の若い男なら数人に1人はタバコをくわえていたりする。ところが難波から心斎橋に向かって歩いている途中、この種のアホは若い連中も含めてせいぜい100人から200人に1人くらいと推定された。私は多少の統計学の心得があるので「臨時調査」を行なったが、その結果は明らかに大阪の方が東京よりも歩行喫煙者が少ないというものであった。路上に落ちているタバコの吸い殻も圧倒的に少ない。
思うにこれは大阪人の方がマナーが良いのではなくて、火をつけて燃やしてしまうような物よりは、もっと実利的な物を買うという難波人の合理性かも知れない。カッコばかりつけたがる東京人もこれだけは見習った方がええんとちゃう?
まあ、とにかく阪神タイガース、おめでとう。(何のこっちゃ?)
大阪の人からコメントを貰った。大阪人がわざわざ街に出てまでタバコを吸わないのは、大阪人はとにかく話題が豊富で話術も巧みで、タバコなんか吸わへんでも間が持つからやそうである。と言うより、タバコなんか口にくわえているヒマも無いんやそうだ。友達や恋人と歩いていても、すぐに間が持てなくなってタバコに火をつける東京人てアホちゃう、と言うてましたで。