石神井公園 part 2 (バードウォッチング)
前回、石神井公園をご紹介しましたが、今回はそこの三宝寺池に憩う水鳥たちの話題です。水鳥といえば鳥取県米子市郊外の水鳥公園も有名ですが、何もそこまで行かなくても身近な公園でもたくさんの鳥たちに逢えます。そんなわけで今回は石神井公園でバードウォッチング…。
写真左は今年の春の連休の頃、カルガモ一家が子育てをしていました。写真右は今年の秋、カルガモの群れの中に少し小柄な体型の鳥が混じっていたので、てっきりあの時のヒナが大きくなったのかなと思って、一生懸命デジカメのシャッターを押し続けてきました。偉そうにバードウォッチングと言ったって、野鳥に関する私の知識はそんなものです。
家に帰ってモニターで眺めると、この小柄な鳥、どうもカルガモの子供ではないようですね。実は黒い体に赤いクチバシ、これはバンという鳥のようで、石神井公園の池でもよく見かける野鳥だそうです。
ところでカルガモのトレードマークはクチバシの先端の黄色、そしてバンという鳥のクチバシはかなり鮮やかな赤…。私はふと思いました、鳥って何でこんなに奇麗な色をしているんだろうか?またそもそも鳥たち自身は色を認識しているんだろうか?
昔なら図書館に行くとか、本屋で図鑑を立ち読みするとか、雑学を吸収するためにいろいろ努力したものですが、最近は便利ですね。パソコンをインターネットに接続して、『鳥の色覚』と入れて検索するだけで次から次へとさまざまな情報が泉のように湧き出してくるのですから…。もちろんそれらのすべてが真実かどうかは判らないのですが、私にとって鳥の色覚とは実に驚くべきことの連続でした。
鳥の視力というと、我々医者ならずとも「鳥目(とりめ)」という病気があるのをご存知でない方は少ないでしょう。言うまでもなくビタミンA欠乏のために、夜になると目が見えにくくなる病気です。だから鳥の目は人間に比べて貧弱だとずっと思っていたのですが、それは間違いでした。人間の目は赤、青、緑の3原色で色彩を見ているのですが、鳥の目はさらに紫外線領域まで含めて4原色で世界を見ているらしいのです。
哺乳類は全体に色彩感覚が貧弱で、犬などは2原色でしか色彩を認識できないのに比べて、ヒトは3原色を認識でき、これは哺乳類としては異例なようです。ヒトなど霊長類は樹上生活が長かったために色彩認識が発達したが、さらに空中生活をする鳥や昆虫などはもっと色彩感覚が発達しているのです。高い場所から下界の状況を認識するときに、色彩感覚はかなり役に立つのですね。四つ足で地面を駆ける犬などは色彩感覚よりも嗅覚や聴覚を発達させました。
また同じ空中生活者でも、鳥と昆虫では色覚も微妙に異なっており、彼らに花粉を運んで貰う植物たちは、それぞれに合わせて花の色を変えてきたようです。すなわち鳥に受粉を媒介して貰うことの多い熱帯系の花は赤色を主体にしたのに対し、温帯系の花は昆虫に照準を合わせて青色の花を発達させたと書いてあるサイトもありました。
さて人間の網膜には赤、青、緑を認識する細胞があるから、3原色で色彩を見ることができるわけですが、我々がある色を赤と認識するのは、あくまで赤色の光線の波長を網膜の細胞が電気的信号に変換して脳に送り、それを我々の脳が「赤」と解釈しているだけです。「赤」の解釈については私の脳と皆さんの脳とはまったく違っているかも知れません。いや、これは1人1人みんな違うはずです。
私が私の脳の中で見ている赤は、皆さんが皆さんの脳の中で見ている「赤」とは違います。皆さんの脳の中で見ている「赤」を、私が私の脳を通して見ることができたとすれば、きっとまったく違う赤でしょうね。最近では養老先生も同じようなことを書いておられたかも知れませんが、私は高校時代にこのことを学友たちと議論したことを懐かしく思い出します。
同じ赤でも人によって違う。同じトランペットの音でも人によって違う。同じ砂糖の味でも人によって違う。感覚の世界は実に面白いものです。ある人にとっては絶対に正しいと思うことでも、別の人にとっては必ずしもそうでない、そういう脳の違いを認めることもまた、世の中を心安らかに渡っていく知恵かも知れません。