巌流島
これは2002年の秋に学会で下関に行った時に、同行していた当院の島田主任が撮影したデジカメ画像です。学会場近くの「海峡ゆめタワー」展望台からの眺望ですが、関門海峡の本州側に浮かぶ画面中央の小島が、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘の舞台となった巌流島だそうです。無粋なクレーンや灯台が建っていますが、島の真ん中が平らにひらけていて、いかにもそれらしい雰囲気ですね。
ところで宮本武蔵といえば吉川英治の長編小説であまりにも有名です。私も夢中になって電車やバスの中でも読み耽り、完結の場面になった時には登場人物たちと別れるのが辛いと思ったほどでした。作家の吉川英治が限りない思い入れをもって生み出したキャラクターだったからでしょう。
しかし歴史小説のもう一方の雄である司馬遼太郎は武蔵には冷淡です。「真説宮本武蔵」によると、一国一城の武将に駆け上がるために、必死に武芸仕合や合戦などで名前を売り込もうとした時代錯誤の情念に燃えた男として描かれていて、何となく悲哀を感じてしまいました。さまざまな人の世の毀誉褒貶を映し出すような島影です。