オズの国
今日(2009年5月8日)、東京は朝から凄い雨だった。雷雲も発生して、稲光とほとんど同時に雷鳴が轟き、自宅の近くにも落ちたようだった。もしかしたら家の屋根だったかも…。
私は雷鳴や稲妻は胸がスッとするような気がして大好きなのだが、さすがに今日の外出は雨靴にレインコートという“重装備”で出かけた。
今日の出先は世田谷区の病院だったが、一日中雨が降ったり止んだりという天気予報は外れて、午後の帰りがけには激しかった雨も止んで久し振りに太陽も顔を出し、せっかくの雨靴とレインコートが恨めしい天気になった。
どうせ降るなら一日中降れよ、と心の中で舌打ちしながら家路についたが、そんな気分をなだめるかのように、帰りの電車の窓から東の空に大きな虹が見えた。虹なんか見るのはもう何年ぶりだろうか。
ちょっとほのぼのした気分になって自宅の近くまで帰って来たら、何とさっきよりもっと見事な虹の柱が立っているではないか。虹の柱はみるみるうちにスーッと伸びて、天空に半円を描いて架け橋を作った。すぐに手持ちのデジカメで撮影した写真がこれである。角度によって幻のように見えたり見えなかったりする美しい橋も、日没前のほんの一時姿を現しただけで、やがて10分足らずの間に夕空に溶け込むように消えてしまった。
虹を越えた空の彼方に子守唄で聞いた国がある
Somewhere over the rainbow way up high
There's a land that I heard of once in a lullaby
映画「オズの魔法使い」の中で主人公のドロシーが歌う“Over the Rainbow”の一節が、あの切ないような美しい旋律と共に心によみがえる。
よく童話やおとぎ話などで、「虹を追いかけて」とか「虹の橋を渡って」とか言うが、私自身はあまりそういう事を考えたり想像したりした覚えはない。ただ虹の橋が伸びて行く先にはどんな場所があるんだろうと、子供心によく思ったりしたものだった。
黒と白以外のすべての色彩が渾然一体となったように見える虹の柱、その中では赤と青も対立しない、黄色と紫も共存している、子供時代の心を言葉で的確に表現するのは難しいが、虹にはそんなイメージがあった。よく虹の七色と言うが、赤橙黄緑青藍紫をそれぞれ別々の色で描き分ける虹のデザインには違和感を覚えた。
すべての色彩が互いに強い自己主張もせずに融和するような国、そんな場所があるならいつか行ってみたい。この世界でのお勤めをすべて果たした後かも知れないけれど…。