顕微鏡の世界


Dr.ブンブンたちが毎日覗いている顕微鏡の中の世界をちょっとだけご紹介しましょう。顕微鏡で日常観察する標本には大きく分けて2種類あります。生体の中のあるがままの状態をそのままホルマリンなどで固定して、数ミクロンの厚さに切って染色したものを組織標本、生体の中から剥がれ落ちたり、こすり取ってきた細胞をガラスの上に塗り付けて染色したものを細胞標本といいます。これらの標本を用いて診断することを、それぞれ組織診断、細胞診断と呼ぶのです。
まず組織診断ではこのような標本を見ています。


これはHE染色と呼ばれる染色法です。あ、染色じゃありませんよ。「エッチ、イイ!」染色でもありません。でもピンクと紫を基調として何となく官能的な色彩ですね。紫色のヘマトキシリンとピンクのエオシンという色素の頭文字を取ってHE(エイチ・エー)染色といい、組織標本の代表的な染色法です。紫色に染まった粒が細胞の核で、このひとつひとつのすべての中に人間1人分の設計図である遺伝子(DNA)のフルセットが入っているのです。昔、初めて顕微鏡ができた頃、生物の細胞を観察するのに生のままでは無色透明で何も見えないので、ある色素で染めたら細胞の核の中身がよく染まった、だからこの物質を「染色質」と呼んだわけですね。その後、染色質は遺伝子(DNA)そのものであることが判明し、細胞が分裂する時には染色質(DNA)が棒状の物体に凝集することも観察されましたので、この棒状の構造を「染色体」と呼んでいるのです。病理の医者は顕微鏡を見ながら、これらの細胞の種類や形、核の形、細胞の並び方などが正常な状態かどうかを観察して、病変の性質を判断しています。組織診断はとにかく人間の目が勝負で、しかも患者さんが手術をするかどうかというような最終的な決断の根拠となりますから、病理の医者はいつまでも修行を続けなければならず、さらに常にベストの状態で顕微鏡に向かえるように自らの体調もコントロールしていなければなりません。




これは細胞診断の代表的な染色法で、パパニコロウ染色といいます。パパニコロウはこの染色法を考案した人の名前です。母に似ててもパパニコロウ……(シラ〜)。淡いブルーとオレンジが青春の色か(何のこっちゃ!)。やはり細胞1個1個の真ん中にある色の濃い部分が核です。細胞検査士や病理・細胞診の医者は、やはり細胞や核の形を丹念に観察して病変の性質を判定していきます。組織診断の材料は手術や生検など、メスで切ったり針を刺したりしなければ採取できないことが多いですが、細胞診断の材料は患者さんにそれほど痛みを感じさせずに採れることが多いので、細胞診は病理の医者だけでなく、産婦人科や内科・外科など臨床の医者も熱心に取り組んでいます。
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