東京新名所
オイオイ、そこを行くのはモスラじゃねえか。久し振りだなあ。
あら、ゴジラ君、本当に久し振りねえ。何年振りかしら。
(モスラは雌か…笑)
俺たち東京に出てきたのは確か2004年以来だよなあ。
そう、ゴジラ・ファイナル・ウォーズ、あんたの引退映画だったわよね。
ああ、そうだった、そうだった。モスラ、お前も出てたよな。
エエ、出てたわ。それで私たちまでついでに一緒に引退させられちゃったわよ。まったく迷惑な話だわ。
ハハハ、悪い悪い。それであれっきりもう誰も東京へは来てないのか?
そう、ラドン君もキングギドラ君も誰もね。隣の会社のガメラ君なんてとっくの昔に引退しちゃったしさ。
フーン、そうか。それもつまらねえ話だな。また昔の怪獣仲間を誘ってひと暴れするか。
でもゴジラ君、これからはそう簡単に暴れられないかも知れないわ。こんな物ができちゃって…。
な、何だ、これは…?
(ゴジラとモスラ、しばし呆然と東京スカイツリーを見上げる)
あんた、これ倒せる?
ウーン、高さ634メートルか。俺も最後の頃は身長100メートルにして貰ったけど、それでも身長の6倍以上だぜ。
あんたの尻尾のキックでもダメかしら?でもあんたは口から放射能を吐けるじゃないの。
ハア?お前、何にも知らないのか?最近はもう放射能は厳禁なんだぜ。
ああ、そうだったわね。じゃあ、もう誰もこれを壊せないってわけね。
そんなら、お前が壊したらいいだろ。確か、お前、東京タワーをへし折ったことあったよな。
エッ…アラ…マア…おしとやかなレディに向かって、へし折っただなんて、やだあ。
バカ、誰がしとやかなレディじゃ。お前が東京タワーをへし折ったのは1961年のことだろが。
あの頃は他に繭を作れそうな場所が無かったのよ。東京タワーが333メートルあったけど、他のビルなんかせいぜい7階建てか8階建てだったもんね。
お前の身長はいくつだった?
そうね、幼虫だったから150メートル、東京タワーの第一展望台にやっと届くくらいだったわ。
お前、かなり凄い力だな。幼虫のくせに東京タワーを倒したんだからな。俺の息子じゃ無理だ。
(ゴジラの息子はミニラ君です)
本当は倒さなくても繭になれたんだけど、監督さんがどうしても東京タワーを倒してくれって言うんで、私も精一杯頑張ったのよ。お陰で翌日からひどい肩こりだったわ。
(オイオイ、モスラの肩ってどこだ?)
しかしここの下の展望台が高さ350メートルだって言うじゃないか。あそこはもう東京タワーのてっぺんよりもっと高いってわけか。
そうね、もう私たちの力じゃ無理ね。他の建物との差があり過ぎて、コンピューターグラフィックを使っても、良い舞台装置の絵柄になりそうもないしね。
そうだな。もう俺たちの出る幕じゃないか。帰ろう、モスラ。
そうね、帰りましょ。途中でインファント島に寄って、お茶でも飲んでかない?小美人のおばさんたちも歓迎してくれるわ。
ちょっと、ちょっと待って下さいよ。場所を変えてもう少し話を聞かせて下さいよ。
お前、誰?
あなた方のファンの1人です。子供の頃はあなた方の映画は欠かさず観てましたよ。
それで私たちに何か御用?
ぜひ対談をお願いしたいんですが…。
ヘッヘッヘ、俺たちが対談だってよ。何だか面白そうだな。
そうね、この話に乗るのも悪くないわね。
じゃあ、キングギドラの野郎も呼んでおいてくれよな。
ハイ、わかりました。というわけで、世にも珍しい怪獣対談はこちら。