高田馬場
JR山手線の池袋と新宿のちょうど中間にあるのが高田馬場です。江戸時代に菅野六郎左衛門と村上庄左右衛門の決闘に、忠臣蔵で有名な堀部安兵衛が助太刀をしたのがこの近くだと言われています。
高田馬場といえば皇居の北西に当たり、「都の西北…」の校歌で有名な早稲田大学はこの地に本拠を構えていますし、手塚治虫さんの手塚プロダクション本社も高田馬場にあり、鉄腕アトムも物語の中では高田馬場で誕生したことになっています。
なぜ鉄腕アトムが高田馬場で生まれたのか、原作者の手塚治虫さんはアトム生誕に関しては徹底的に“馬”にこだわった駄洒落を連発しています。アトムの生みの親は天馬博士、トビオという一人息子を交通事故で亡くし、その等身大の身代わりのロボットとして作られたのがアトムでした。
天馬博士は群馬県出身、練馬大学で学び、脳の海馬の研究の第一人者、高田馬場にある科学省の長官に出馬したが、いつか馬脚を現すと野次馬から下馬評を浴びている…とこんな具合、物語では日本の科学省は高田馬場にあったんですね。
手塚プロダクションと鉄腕アトムに因んで高田馬場駅下の大ガードの壁一杯に、鉄腕アトムをはじめとする手塚漫画の人気キャラクターたちの絵が描かれています。手塚漫画に親しんだ世代の人たちなら、改札を出たら思わず足を止めてしばらく見入ってしまうかも知れません。
ああ、それから高田馬場駅の山手線の発車サイン音は『鉄腕アトム』主題歌のメロディーです。ちょうど西武池袋線の椎名町駅の発車サイン音が藤子不二雄さんの『怪物くん』のテーマソングでしたが、あの時代の漫画で育った世代にとっては懐かしい限りです。
懐かしいといえば、私事で申し訳ありませんが、私たちが新婚生活を始めたのが高田馬場でした。上の壁画のすぐ左側に“さかえ通り”という路地があり、ここはいかにも学生街らしい飲食店が軒を並べているのですが、そこをずーっと入っていくと神田川が流れており、その川に面するマンションの一室でした。
あの頃は2人ともケーキが大好きで、駅前のケーキショップで気を利かせて2人前のケーキを買って帰ると、相手も同じように2人前のケーキを買って来ている、仕方ないから4人前のケーキを2人で食べる、などというムチャクチャな食生活を1週間に2度も3度もしていたのに、当時は体重も増えないし血糖値も上がらなかった、やっぱり若かったんですね、今同じことをしたら自殺行為です(笑)。
最近よく新婚時代のマンションの前を仕事で通りますが、1階の店舗は変わったものの玄関の様子などは少しも変わっていません。新婚時代なんてほんの最近のことのように思っていたところ、つい先日も私の教え子の卒業生たちが相次いで結婚し、その年齢を見て改めて驚いた次第です。ああ、私もあんなお年頃の女性を娶ったのか、この子たちもこれからあの時の私たちと同じ人生の道を歩くんだなと。