東京スカイツリー

 2008年に起工された新東京タワー(東京スカイツリー)は、まるでタケノコのようにスクスクと育ち続け、確か今年(2010年)の5月に見た時にはまだ中間部の展望台らしき膨らみも出来ていなかったのに、9月にはもう展望台からさらに上へ上へと伸び続けており、すでに東京タワーの333メートルをはるかに凌ぐ高さになっています。
 左の写真は葛西臨海公園あたりから緑地越しに見えた建設中のスカイツリー、右は何と板橋区にある私の大学の高層階から見えたスカイツリー、わずか1ヶ月ばかりの間にまた少し背が伸びていました。

 2012年春に墨田区押上の東武鉄道貨物駅跡に完成するこの東京スカイツリー、最終的な高さは当初の予定より少し上積みされて634メートルになると聞いた時、アア、そういうことか!とピピッときたのは私の他にも何人もいたでしょう。この数字は“ム・サ・シ”、つまり武蔵です。私の出身高校と同じ名前なんですね。たぶん私の高校の同窓生はニヤッと笑った人が多かったと思います。でも一応、私の高校ではなく、武蔵国に因んだということになっているようですが…。

 東京タワーの333メートルもずいぶん印象的な数字でした。昭和33年に完成して、まさに3づくしの東京タワー、その後の怪獣映画ブームに乗ってずいぶんたくさんの怪獣が壊しにやってきました。一番印象的なのはモスラの幼虫が東京タワーをへし折って繭を作り、そこで羽化して成虫になるシーンですが、他にもキングギドラの翼の風圧で倒壊したり、ゴジラの熱線で破壊されたり、東宝特撮映画だけでも何度再建されたことでしょうか。
 東宝特撮映画だけでなく、大映のガメラも壊したし、テレビの特撮番組『ウルトラQ』でもガラモンが押し倒しました。まあ、とにかく東京タワーは怪獣が破壊するには絶好の目標だったわけです。それがいつの頃からか、怪獣たちは東京タワーには目もくれなくなり、代わりに新宿の高層ビルや、お台場や横浜みなとみらいなどを破壊するだけで満足するようになってしまいました。要するに東京タワーの地位の低下ですね。

 怪獣に壊されるだけではなく、確か『戦えマイティジャック』という比較的マイナーな特撮番組では、何かの謀略組織が日本に降伏を迫り、降伏の意志があれば東京タワーに白旗を上げろというストーリーがあったと思います。
 昭和40年代だったはずで、当時はかなりいろいろな場所から東京タワーが望めました。ちょうど今のスカイツリーと一緒です。だから謀略組織からの脅迫に屈して東京タワーに白旗を上げるか上げないか、それをほとんどすべての東京都民が目にすることが出来た時代でした。
「全東京都民の意志を象徴するかのように東京タワーに白旗は上がらなかった」
そんなナレーションが入っていたようにも思いますが、その画面の背景には広々とした東京の風景の向こうに東京タワーの遠景が写っていました。(まだモノクロの時代でした。)

 今あんな画面を撮影できる場所はありません。最近では都内のあちこちに高層ビルがニョキニョキと建ち並び、東京タワーはその陰に隠れてしまったのです。だから東京タワーから発信される電波が届かなくなり、スカイツリーが必要になったわけですが…。
 昭和30年代に少年時代を送った私たちの世代にとって、東京タワーは象徴的な存在でした。映画『三丁目の夕日』の中には建設中の東京タワーがCG画像で再現されていますが、世界一高いテレビ塔が日本に出来るんだという期待に皆が胸を膨らませていた時代だったのです。

 それが高層ビルの物陰から遠慮がちにしょんぼりと建っている東京タワーの姿を目にしても、何も感じなくなってしまっていました。まあ、私たちもゴジラやモスラと同類項なわけです(笑)。
 先日、いろんな方角から建設中のスカイツリーが見えてびっくりしたので、久しぶりにあの東京タワーの時代を思い出しました。それでは最後に六本木から見た東京タワーの姿をドーンと一発、やっぱり伊達な美男子といった雰囲気に溢れていますね。

        帰らなくっちゃ