バーチャルトラベル
もう二度とこの地を訪れることもないと思っていましたが、先日また思いもかけず、オーストラリア内陸のシンプソン砂漠の真ん中に聳えるエアズロックの奇怪な姿を目にすることができました。赤い砂漠の中にポツンと一つだけそそり立つ巨大な一枚岩、先住民のアボリジニーの人たちの聖地で、現在では彼らの呼び名にしたがってウルルと呼ばれることが多いようです。
実はこの写真、見る人が見ればすぐ分かりますが、最近(2013年)のGoogle
Earthの画像です。Googleの進化も大したものですね。
2年前にはGoogleが2つの地点間の最短ルートをいとも簡単に割り出してくれる、ついでに日本からアメリカまでの徒歩ルートまで検索してくれる(笑)…なんて驚いていたものでしたが、その後この徒歩ルートを航空写真上の“実写版”で示してくれるようになり、アメリカまでの徒歩ルートを指示すると、広い広い太平洋を省略せずに行けども行けども波の上…などという気が利かないところはともかくとして、陸地の上ではちょっとした小旅行気分を味わわせてくれる機能に発展し、そして最近のGoogle
Earthの登場となりました。
地球上のどこでも、住居表示でもランドマーク名でも何でもいいから地点を指定すると、青い地球の画像にどんどん近づいていって、最後はご覧のエアズロック(ウルル)の画像にまでズームインします。その後はGoogle Earthの“操縦装置”みたいな部分の操作に習熟すれば、あとはその地域の地形やランドマークなどをいろいろな方向や角度から眺めることができる。初期のフライトシミュレーターなどよりもずっと綺麗なバーチャルの空の旅です。もっともGoogle Earthでは飛行場に着陸はできませんが…。
でも自宅に降りていくことはあまりお勧めしません。さすがのGoogle Earthも地表の景色の大部分は航空写真を合成して、多少立体的に見せてくれているだけですから、私たちの自宅など屋根しか写っていない、屋根の写真だけから家の立体像を合成するなんて、どんなコンピューターでも不可能ですよね。だから自宅の住所をGoogle
Earthに検索させて降りていってみると、自宅もお隣さんもお向かいさんも、すべての街並みが巨大な怪獣の足で踏みつぶされたようにペッチャンコになって地面に貼り付いていて、ちょっと情けない気持ちになります。
(補遺:最近もう一度やってみたら、地表に降りるとそのままストリートビューと連動するようになっていた)
これだけ忠告しても、もし間違えて自宅の屋根に降りてしまった方は、ぜひ再び高度を上げてズームアウトして、もとの地球の画像にまで戻って下さい。自分の家も確かに地球上にあるんだという何か不思議な気分です。今まで当たり前だと思っていたことが、本当に当たり前だったことに気付くのが、こんなに不思議なものとは思ってもいませんでした。
そして地球の画像の上をほんの数センチ移動して(モニターのサイズによって違いますが)、アメリカでもヨーロッパでもアフリカでもオーストラリアでも、もちろん日本国内の別の地点でもよい、どこか気まぐれな場所に飛んで町や村の景色の中にズームインで降りていって下さい。そこにはやはり怪獣に踏みつぶされた誰かの住居の屋根があるはずです。顔も名前も知らない、どんな仕事や生活をしているかも知らない、だけど現実にこの地球上に生きている人たちが住んでいる家が確かにそこに存在している、それも当たり前のことなんだけれど、実際にGoogle
Earthで目の当たりにすると、ものすごく不思議で新鮮な感覚に襲われる、そんなバーチャルトラベルをぜひ体験してみて下さい。