中野 稔さんとの出会い
大きな眼を輝かせた中野 稔さんとの出会いは、私にとって忘れることのできないものであった。病に負けず作曲に打ち込む姿が衝撃的だったのである。
それはちょうど10年前、国立長良病院でのことであった。ここに勤める私の小学校の同級生、河野芳功君が「音楽で社会を明るくしたい、病院にも音楽を届けたい」という私の願いをかなえてくれたのである。そこで、、“音楽が大好き、特にヴァイオリンが好き”という中野さんが、人なつっこい笑顔で素敵な作品「ロンド」の楽譜を下さったのだ。その時以来、私はこの曲を大切に演奏している。「ロンド」を演奏するたびにあの日の中野さんを思い出す。病棟を演奏して回る私の前になり、後になりながら、車椅子でついて回る中野さんは本当に音楽が好きなのだなと感激したものだ。
中野さんの作品は世の中によくある癒しの曲とは全く異なるものである。心の奥深くから湧き出るかのようなメロディー、それは、時には魂の叫びや祈りにも通ずるもので、誰もが胸を打たれると思う。私は素晴らしい作品に感動して、胸がいっぱいになりながら、このCDを録音した。中野さんの音楽の、もの凄いエネルギーが私の全神経を集中させてくれて、この録音が仕上がったと思っている。
病院生活では創作活動に不便なこともあると思うが、そういったことは全く感じさせない。素晴らしい才能!私はこの出会いを人生の宝物だと感じている。一人でも多くの方にこの感動を伝えられるように、これからも心を込めて演奏したいと思っている。
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