スカイタワー西東京

 ここは西東京市…と言われてもあまりピンとこない方も多いでしょうが、2001年に田無市と保谷市が合併して発足した新しい市です。その中でも特に際立つのが旧田無地区に建っているこの電波塔、『スカイタワー西東京』といいますが、運営する株式会社田無タワーにちなんで、地元では『田無タワー』と呼ばれることも多いそうです。

 徹底的に埼玉県をバカにして(ディスって)埼玉県民からも喝采を浴びた映画『翔んで埼玉』の中で、なぜか東京都であるはずの田無の住民までがディスられる場面がありました。あの映画の中で東京都民が一番偉いが、田無や八王子の住民は“二級都民”だというわけです。

 『翔んで埼玉』は、これでもか、これでもかと言わんばかりに埼玉県や埼玉県民をコケにして笑い倒しまくりながら、結局「何も無いけどいい所」という郷土愛を盛り上げる内容が大受けしたんでしょうね。では埼玉県のついでに半分ディスられたも同然の田無市(田無地区)、“
圃がい”という穏やかならざる地名のとおり、何にも無いかと思ったら、実はこんな立派な電波塔がある、いったい田無って何物…?(笑)

 というわけで、今回はこのスカイタワー西東京のご紹介ですが、その前にこの“田無”の地名の由来、本当に定説はないそうですね。西東京市の公式サイトによると、本当に田圃が無いから“田無”だという説を採用していますが、いや、もともとこのあたりは畑が多くて田圃が無いのは当たり前、しかも何かが無いこと自体が地名になるのは少ないのではないか、“海無”とか“松無”とか“桑無”とかいう地名だって見当たらない、それよりはむしろ田が無い地域に田圃を開いたことを示す“田成
(たなし)”が時を経て違う漢字を当てられるようになったのではないかとか、近くを流れる川が段々状に流れていたので“棚瀬(たなせ)”から変化して“田無”の字を当てられるようになったのではないかという説もあるそうです。いずれにしても由来の詳細は不明ということで…。

 スカイタワー西東京は高さ195メートル、1989年(平成元年)に完成した多目的電波塔で、通信用、携帯電話用、無線呼び出し用、移動体通信用、FM放送用などさまざまな用途のアンテナが装備されているそうです。また夜間は翌日の天気予報として紫(晴)、緑(曇)、青(雨雪)にライトアップされたり、クリスマスなどには特別のライトアップもされるらしい。ただし建築基準法上の“建築物”ではなく“工作物”の扱いとなるため、一般公開用の展望台は設置されていないとのこと。惜しい…(笑)。

 私が初めてこの塔を見たのはもう15年以上前、まだ運転免許も返納せず、自家用車も手放していなかった時期のこと、もうその頃は滅多に車を運転する機会もなかったので1ヶ月に1〜2回、エンジンの調子を維持するためだけに早朝に軽く運転するのを常としていました。ある時、東京の北西方面をグルリと巡って新青梅街道をドライブしていると、忽然と目の前に現れたのがスカイタワー西東京だったのです。
「何だ、これは…?」
車を路肩に一旦停止させて、しばし唖然と見上げたものでしたが、当時は板橋区加賀の職場に通勤していて、日常の生活圏に入っていたわけではなかったので、多少は気になりながらもいつしか忘れておりました。

 ところが定年後に職場健診などで東京の西方地域などにもよく出かけるようになると、幾つかの路線の車窓から見えるんですね。よく見えるかというと、別の記事でもちょっと書いたとおり、東京都内の鉄道沿線は建ち並ぶ高層マンションや広告看板などが視界を遮るので、ビルとビルの隙間からチラッと見える程度。

 それでも西武新宿線の田無駅と花小金井駅の間は距離が近いせいもあって比較的よく見えるし、西武池袋線でも石神井公園駅とひばりヶ丘駅間の高架区間でははるか遠くにしばらく見え続けます。またJR中央線でも三鷹駅と東小金井駅間の高架上から見え続けますね。

 ちょっと驚いたのは、京王相模原線で多摩川を越えた少し先、稲城駅付近の10キロ以上隔てた場所からも見えたことです。普通の高圧送電線とも違い、また東京タワー東京スカイツリーとも違い、この塔は頂上へ向かって先細りせず、上から下まで太さがほぼ同じズン胴スタイル、さらに上部には3層のひさしが張り出していて、近代的な電波塔というよりは、日本寺院の三重塔のような古式ゆかしい風情がある、その特徴的な形状はかなり遠くに霞んでいても、まず間違いなく田無の電波塔だと識別できます。まあ、電車に乗ってもスマホばかりいじってボーッと生きている人たちには関係ありませんが…(笑)。

 東京都内の高い電波塔といえば、634メートルの東京スカイツリーと、333メートルの東京タワーが定番ですが、私は195メートルのスカイタワー西東京も仲間に加えてあげたいと思いますね。高さはスカイツリーの1/3もありませんが、高層ビルも少なく麦畑が点在する田無地区にあるため、電車の車窓から眺めることのできる範囲はほぼ匹敵するんじゃないでしょうか。

 確かに山手線の上野駅付近から見える東京スカイツリーは線路からの距離が3倍くらいあるのに、その質感に満ちた偉容は到底スカイタワー西東京の及ぶところではありませんが、私はこの日本古来の寺院建築を思わせる三重塔のような外観に一票です。展望台が無いことだけが唯一の心残りか(笑)。

この地図はgoogle mapをベースに手描きで地名や路線名を加えたものです。


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