津々浦々
私も大学の教員を定年退職してから、介護施設や保育園の健康診断で首都圏各地をいろいろ巡回させて頂いておりますが、健診チームのメンバーの人たちと最寄りの鉄道駅で待ち合わせすることが多く、これまでの人生で1度も乗降することのなかった駅もすでに軽く50ヶ所を越えました。JR相模線や相模鉄道(相鉄線)、横浜市営地下鉄ブルーラインやグリーンライン、西武多摩湖線や国分寺線や拝島線、新京成線など人生初乗り路線も何本もあります。
こうして首都圏に限られてはいますが、さまざまな鉄道駅に降り立ってみて感じることは、これまでお互いに知らなかっただけで、それぞれの鉄道駅が支える地域の数だけ住民の方々の日常生活があるということです。考えてみれば当たり前のことなんですが、実際に目の当たりにしてみると、やはり感慨深いものがあります。
朝は近郊の団地や住宅地からバスを利用された会社員やOL、中学生や高校生たちが足早に、あるいは小走りに鉄道の改札口に向かって行く、またそれとは逆方向の流れで、電車から降りて地元の学校に通う生徒さんたちが三々五々グループに分かれて学校へ向かって行く。改札口を出たところで仲間と待ち合わせて登校するのは圧倒的に女子高校生に多いのですが、JR横須賀線の衣笠駅では男の子たちのグループが幾つも待ち合わせて誘い合っては楽しそうに学校へ向かっていきました。自分の高校時代を思い出しても、他の大部分の駅での登校状況を見ても、普通は男子はあまり寄り合わないように思うのですが、部活か何かの仲間なんでしょうか、男子が仲良くしているのは本当に楽しい学校生活なのだなと微笑ましくなります。
あと冬場の女子高校生は短いスカートから素足を出してちょっと心配ですね。ジャージのズボンや黒いストッキングを着用している子もいるんですが、7割くらいは素足…、あんまり脚を冷やしては健康に良くないんじゃないか、学校の保健の先生からジャージやストッキングの着用を勧めて貰った方が良いんじゃないかとも思いますが、高校生のお嬢さんを持つ健診スタッフの方に聞いたら、何と冬場を素足で乗り切るのは『女子高生魂』なんだそうです。若い娘さんのド根性だったわけですね(笑)。
昼間は買い物の主婦や、取引先廻りの外勤サラリーマンや、部活がなくて早めに帰宅する生徒さんたちが行き交う鉄道駅、定食屋や蕎麦屋やコーヒーショップやベーカリーがあって、商店街があって、ドラッグストアがあって、パチンコ屋があって、銀行の支店やATMがあって、飲み物の自動販売機があって、自転車の駐輪場があって、コンビニエンスストアがあって、携帯電話ショップがあって、大体どこもそれほど違いはないんだけれど、やっぱり私の馴染みだった十条や豪徳寺や築地や本郷三丁目の駅とはどこか違う。
自動販売機や携帯電話ショップなど昔は無かったものがどこの駅でも目立つ反面、昔はほとんどの駅前にあったものが現在は無くなってしまっている。公衆電話ですね。たまに見かけても、もうテレフォンカードを日常的に持ち歩く人も少ないのでしょう、電話を掛けている人を最後に見たのはもう何年前のことだったか。
ところでこの記事に載せた上の写真、どこの駅だか分かりますか。駅前に整然としたバスターミナルがあり、駅舎の向こうにはビル街、さらに遠景には山並みがあって、河川に架かる橋梁も見える、まさに津々浦々の駅なのです。東海道新幹線と東北新幹線の車両がいるから東京駅以外には考えられないのですが、何とJR九州の特急車両もいるし、バスターミナルには東京駅に乗り入れない西武バスもいる(笑)。津々浦々の駅の記事に、特定の駅前の写真を載せるわけにはいかなかったので、大宮の鉄道博物館(てっぱく)にある鉄道ジオラマの中央駅の写真を使いました。