またやっちゃった、札幌

 今年(2013年)は6月初旬に久し振りに札幌を訪れました。たぶん7年振りだと思います。札幌駅前もすっかり整備されて綺麗になっていました。カラ梅雨とはいえ何となく鬱陶しい日々が続く東京を離れて札幌に着いてみると、もう初夏を通り越して真夏の日差し、気温は25度を上回っていましたが、空気はサラッとしていて気持ち良かったです。

 ライラックの花も少し見頃を過ぎてはいたけれど、まだまだ北大植物園では上品な紫色の花が咲き誇っていました。先月にライラック祭りは終わりましたが、それに続くYOSAKOIソーラン祭りは今年で22回目を迎えるそうです。しかし浜松祭りなど知っている私から見ると、何かが違うような気がしました。札幌の街全体が妙に醒めているのです。

 歴史が新しいイベントですから、まだ祭りの熱気が感じられないのかも…、そう、YOSAKOIソーラン祭りはまだ『イベント』であって『祭り』ではない、参加者はともかく、観光客や特に住民の間から自然に盛り上がってくるエネルギーが不足している。
 ネットを調べてみると、必ずしも札幌市民の広範な支持を得ているイベントではなさそうです。アンケートを集計すると、質問の設定にもよるのでしょうが、YOSAKOIソーラン祭りに対する札幌市民の評価は賛否半々のようで、住民の過半数とは言わないまでも、2割3割ほどのかなり多数の住民からそっぽを向かれたイベントでは、確かに祭りのエネルギーは感じられないわけです。

 浜松祭りでは、そもそも祭りの賛否を問うアンケートなどあり得ません。参加者が各町内の住人たちで、町内ごとに盛り上がっていますから、浜松市全体が祭りに向かって自然にヒートアップしていったものでした。3年間浜松市民だった私には、今回の札幌市民の無関心は気になります。
 浜松では凧を上げるのも屋台の引き回しをするのも浜松市民、しかも最近では郊外の新興の町内も巻き込んで祭りの規模は大きくなっているようですが、札幌では踊るのは札幌市民主体ではなく、道内はもとより日本全国から集まってきた踊り手たち、中にはセミプロ級のグループもあるようです。これでは本来の札幌市民たちは祭りに参加するどころか、阻害された感じを抱く人も多いと思われます。

 YOSAKOIソーラン祭りの実行委員会の人たちは、その辺の祭りとイベントの違いをもう一度よく考えて、根本的に改革していかないと、せっかく20年以上も続けてきたイベントも衰退の一途をたどるかも知れません。あと観光客に対する待遇も良くない。まだ群衆も少ない昼間のうちから、大通り公園など会場のステージで踊るグループを見ようとちょっと足を止めただけで、実行委員と称する人たちが近づいて来て、「そこで観覧しないで下さい」「立ち止まらないで下さい」「あっちへ行って下さい」と注意されてしまう。祭りなんてものは
踊る阿呆見る阿呆がいて盛り上がるものなのに、イベントの進行に邪魔になるからと排除、排除の一点張りのように感じました。
 祭りの踊り手も札幌市民も観光客も一緒に盛り上がれるような祭りの在り方を、主催者はもう一度考え直して欲しいと思います。



 ところで私が今回札幌入りしたのはYOSAKOIソーラン祭りを見るためではありません。同時期に札幌で開催された日本病理学会に出席するためです。どうせ昼間は会場近くの大通り公園に行っても祭りの実行委員の人たちに追っ払われてしまうので、昼間はずっと学会の会場で勉強
(zzzzz)していました。

 そして学会の講演が終了した後は、今度は日本病理医フィルの練習です。これは病理医を中心に結成されたオーケストラで、昨年の4月には横浜みなとみらいで第1回演奏会を開きました。今回の札幌では市民講座に引き続く学会共催のプログラムとして、病理医の活動の宣伝の意味もこめて第2回演奏会を開いたわけです。この写真は本番直前、最後の合奏練習(ゲネプロ)の風景。

 私もまた性懲りもなく出演者にしゃしゃり出ました。還暦を過ぎてよくやるわという感じです。高校時代最後の演奏会で、これでもう二度と楽器のステージに立つことはないと、きっぱり思い切ったはずなのに、やはり若い頃の道楽が再燃すると手がつけられない、こういうのは焼けぼっくいではなくて何と言うんでしょうね(笑)。第1回の横浜に続いて、またやっちゃいました。

 しかし今回は、42年ぶりの再デビューだった昨年とは違って、打楽器の怖さを改めて思い知らされる羽目になりました。ビゼーのカルメン第1幕への前奏曲で調子よくシンバルを打ち鳴らしていたのはいいが、突然途中で1回、ジャーンと鳴るはずの楽器がジャッと響きが止まってしまった、おそらく2枚の円盤を打ち合わせる角度が微妙にコントロールを外れたのでしょう。たった1発でしたが、これはもう真っ青です。
 いくら練習で調子よく響かせていても、本番で1発不調の音を出してしまえば、打楽器奏者としては面目丸潰れというところ、たぶんカミさんのプロの楽団でこんなことをしたら袋叩きで次の演奏会から干されてしまうでしょうが、アマチュアの音楽仲間というものは優しいですね。きっと来年の第3回演奏会にもしゃしゃり出ていくと思いますよ、広島に…(笑)。

 でもあのシンバルの響きが止まった瞬間の、微妙だけれど異様な右腕の感触、忘れようったって忘れられるもんじゃありません。
「アッ、またやっちゃった!」
明け方の3時頃、ホテルでうなされて目が覚めました。触覚だけの夢を初めて見ました、というか夢を感じました(汗、汗(-_-
)。

         帰らなくっちゃ