横須賀・再会

 この間久し振りに横須賀軍港を訪れました。JR横須賀線の横須賀駅で下車して、改札を出て、そのまま左手前方の横須賀臨海公園へ足を向ける、それが学生時代からもう何十年も続いている私の横須賀散策コースです。
 この公園もその後ずいぶん綺麗に整備され、その際に別のページに写真を載せた軍艦長門碑も少し奥の方に移動されて、かつてのように海をバックにして停泊中の戦艦長門の姿を偲ぶような位置ではなくなったことは少し残念です。

 それと今回びっくりしたのは、JRの横須賀駅から一番近い岸壁に、ご覧のように護衛艦隊の主力艦ともいうべき汎用護衛艦が海を圧して係留されていたことです。私はこんな間近な位置に新鋭の護衛艦が係留されているのを見たのは今回が初めてです。これまでは臨海公園から一番近くに見えたのは、補給艦とか掃海艦などいわば“縁の下の力持ち”的な艦船ばかりでした。
 まあ、昔の戦艦長門の時代のように、一般人や部外者に近くで眺められては主砲の口径などの機密が漏洩して困るわけでもなく、外から見て判る程度の装備はもうわざわざ隠すまでもないということか。
 それとも永世中立国スイスのように、我が国にはこれだけの武装があるんだぞ、我が国に指一本でも触れればお前らも痛い目に会うぞという威嚇の意味で主力艦を前面に出して置いてあるのでしょうか。そうだとすればまさに戦前のsilent navy (沈黙の海軍)の伝統の復活です。
 海軍は必ずしも魚雷やミサイルを撃ち合って戦争するためだけにあるのではない、その存在そのものが仮想敵国による武力発動を抑制するというのが沈黙の海軍の考え方です。思えば我が国の自衛隊(軍隊)が日陰者の存在であった時代が長すぎたために、我が国の領空に向けて人工衛星と称する弾道ミサイルを平然と発射するような無礼な国家も出現してきました。

 永世中立国スイスは、そのうちこのコーナーでも御紹介できるかも知れませんが、国際空港のロビーの売店でジェット戦闘機や戦車の絵葉書を売っている、また大学教授の自宅の庭に大砲が隠してあることなどもスイスに留学した人などを通じて世界中に広まっている。つまり我がスイスに手を出せば、軍人も民間人も一緒になって、山岳地帯を戦場にして徹底的に戦うぞという威嚇ですね。まさに沈黙の軍隊です。

 まあ、それはともかく、この岸壁に係留されている艦番号112の護衛艦、私はまさかと思ったのですが、ちょうど2年半前、海上自衛隊観艦式に招待して頂いた際に乗艦した護衛艦まきなみです。JRの駅に着いてこの艦と番号が見えた時から、見覚えがあるなとは思っていたのですが、まきなみはその後に編制変えがなければ佐世保に所属する艦のはず…、普段ここにいるはずはないなと半信半疑でした。そういう記憶は最近どんどん不確かになっていますから…(笑)。
 自宅に帰って関連書籍や2年半前の写真をチェックして、ああやっぱりそうだったかと懐かしく思った次第です。乗員の方々も異動もあったでしょうが、皆さんまだお元気でしょうか。ちょうど北朝鮮が妙な物を打ち上げるなどと火遊びを予告している真っ最中でしたから、青空の下でのどかに停泊しているように見えましたが、やはり艦内は緊張していたのではないかと思います。


       帰らなくっちゃ