空の高みから:往路編

 今年(2023年)の猛暑もまだ収まらない9月、カミさんのお供で広島へ行くことになり、久し振りに飛行機に乗ることになりました。コロナ禍以降初めてのことです。幸運なことに機体前方の窓際の座席に座ることができたので、飛行中はずっと下界の景色を楽しむことができました。

 真綿の塊を並べたような積雲がかなりビッシリと並んでいて、視界は今ひとつ良好とは言えませんでしたが、雲の切れ目もあちこちにあって、羽田空港を北向きに離陸してしばらくすると東京スカイツリーがよく見えました。

 左の写真、画面右下を蛇行しているのが旧中川、画面上方1/3くらいを横に貫いているのが隅田川で、その川辺の画面中央あたりに東京スカイツリーが見えます。拡大してコントラストを強めたのが右側の写真で、プロのカメラマンがヘリコプターから空撮した写真と同じアングルで撮影できるなんてラッキーですね。よく見ると浅草寺の境内も見えます。つい最近散策した場所でもありました。

 最初の左写真の右下方で旧中川が大きく蛇行するあたり、ここに1本の高い煙突が見えますが、墨田清掃工場です。実はこの近所の施設に年数回ほど健診の仕事で訪れることがあり、また東京イーストサイドや千葉方面に出かける際には総武線の車窓からもよく見えるので、私にとってお馴染みの煙突、そんな場所をたまたま空の高みから見下ろすチャンスなんて、パイロットを職業としない一般人にとっては滅多にあるもんじゃありません。

 羽田空港を北向きに離陸して西や南に向かう飛行機は、荒川上空あたりで大きく左旋回します。この左旋回コースは荒川河川敷を歩いている時に地上から何度も見上げたことがありましたが、別のコーナーでも書いたように、飛行機は左旋回する時に左翼を下方に傾けるので、左側座席からは都心方面の地上がよく見えるわけです。

 さらに都心上空を旋回するうちに、もっとお馴染みの場所が見えてきました。東京ドームです。何度かプロ野球の試合を観戦したこともありますし、東京メトロ丸ノ内線で通勤していた頃は、あの巨大なドームを車窓から毎日の往復で目にしていました。隣接する後楽園の庭園や遊園地もはっきり見えますね。

 幸運に恵まれて好天の日に飛行機の窓際のチケットを取れたら、こんなスペクタクルを見逃す手はありません。しかしちょうどこんな景色が望めるような高度にある時は、機体もガタガタ揺れることが多いし、何とか無事に飛んでくれ〜と神様に手を合わせていたくなる気持ちは飛行機恐怖症の私にもよく理解できます。

 それにちょうどこのくらいの高度に達する前後に、それまでずっと鳴り響いていたゴオオッというエンジンの轟音が一瞬フッと消えたように錯覚する瞬間がある、たぶん離陸してから一定高度に達するまで目いっぱい噴かしていたジェットエンジンの出力が絞られるタイミングだと思うのですが、あれは確かにちょっとビクッとしますね(笑)。

 自分の住む街、訪れた思い出の場所で、地上から見上げた物を空から見下ろす貴重な体験のチャンスに当たったならば、ぜひ現代航空機の安全性を信じ、別の記事でもお教えした“飛行機が落ちないおまじない”も活用して、心ゆくまで楽しんでみて下さい。


         帰らなくちゃ