大阪港

 大阪港を初めて訪ねてみました。大阪もお別れかなどと言いながら、あれからすでに2度目の来阪ですが、それならもっと大阪らしい大阪城とか道頓堀とかで楽しめば良さそうなものですね。もちろんそちらも行きましたが、今回ちょっと大阪港も見ておきたいと思ったのは、最近海外から来日する10万トンクラスの大型客船の中には、横浜港や東京港を素通りして大阪に入る船もチラホラあります。現在最大級のクルーズ客船は図体が大きすぎてあのベイブリッジやレインボーブリッジの下をくぐり抜けられず、橋の外側の貨物用埠頭に着岸しなければならないので、それならばと東京湾はキャンセルして大阪や長崎や博多に入るのですが、そういうメガシップが来日して、大阪港の天保山客船用岸壁に入港する写真などを雑誌『世界の艦船』のグラビアで紹介されるたびに、関東在住の船舶ファンとしてはちょっと悔しい思いをしておりました。それで今回は大阪港を訪ねてみようかと…、まあ、単純な嫉妬ですね(笑)。

 この日は旅客定員114人、バハマ船籍のCaledonian Skyという総トン数4200トンの可愛らしい客船が横付けしていましたが、10万トンを越えるメガシップが接岸すると、背後の巨大な観覧車の直径の下側半分以上が隠れてしまう、最近の大型客船はそれくらいバカでかいのです。Caledonian Skyは日本沿岸クルーズの最中に大阪港にも立ち寄っていたらしい。この記事を書いている10日後の時点では金沢にいるとのこと。

 さて大阪港には横浜のみなとみらいのような大観覧車や大きなゲート型の橋もかかっているのですが、何となく横浜や神戸のような意味での港町の落ち着きに乏しいような気がします。立派な水族館である海遊館や、天保山の緑地帯はあるのですが、無骨な高速道路やコンテナ埠頭などが渾然一体となったような雰囲気で、観光客や行楽客だけがのんびりできるような区画の線引きがはっきりしないせいかも知れません。しかしそれだけに却って商都大阪の活気を感じます。

 大阪港は船で海上から遊覧しても50分程度でだいたい見るべき場所は見てしまいます。港湾の規模も東京港などに比べてかなり小さいようですが、外貨のコンテナ取り扱い数では国内五指に入ります。
 そもそも大阪府は信じられないことに、日本の全都道府県の中で一二を争うほど面積が小さいのですね。埋め立てが進んでやっと四国の香川県に勝ったという話を読んだことがあります。その小さな大阪府が日本列島の中で占める存在感を考えたとき、その海の玄関である大阪港の規模もこれでよいのかも知れません。横浜の大桟橋に入れない巨大なメガシップも入港できるし…。

 その大阪港の遊覧船、この写真のような帆船を模した形をしています。名前はサンタマリア、新大陸を発見したコロンブスの船のイメージだそうですが、これはもうちょっと何とかならなかったのですかね。東京港にも朱塗りの御座船を模した遊覧船がありますが、やはり日本の港湾で昔の船の形にするのだったら和船にして欲しかった。大阪こそ黄金の国ジパング…という大阪人の心意気は買いますが、将来もし代替の遊覧船を建造する時は、江戸時代に日本海各地から下関を回って西回りで大坂へ米などを運んだ北前船のイメージなどいかがですかね。

 ただし北前船などの和船は船首から船尾にかけて船底を貫く竜骨(キール)が無く、さらに甲板も無いので、ちょうど一寸法師みたいにお椀を水に浮かべただけの船体でしたから、外洋で時化に遭えばたちまち難破してしまう(ナンパではない)という代物、だから頑丈で近代的な船体の外観だけを北前船にしたような遊覧船を造って欲しいです。

 そう思って和船イメージの大阪港遊覧船の代船をもうちょっとよく考えてみると、なかなか良いモデルが見つからない。北前船や紀伊國屋文左衛門のみかん船ではなく、大坂といえば秀吉、秀吉ゆかりの船はないかと探してみたが、秀吉という人物は晩年の文禄・慶長の役、いわゆる朝鮮出兵で明とも戦火を交え、室町時代から続いていた日明貿易も途絶えさせてしまったのですね。これでは中国大陸との貿易に使われた船を再現するわけにも行かなかったのでしょう。日本と最も近い距離にある中国、その大国との経済的協力と軍事的敵視政策の調和、それは我が国にとっていつの世も難渋する最大の課題であるようです。


         帰らなくっちゃ