横浜大桟橋の新鋭護衛艦

 これまでも横浜大桟橋に海猿の巡視船巨大なメガシップなど、珍しい船が横付けしているのをたびたびこのコーナーに書いてきましたが、今回のは異色中の異色、今年2015年3月に竣工した海上自衛隊の新鋭護衛艦いずも(DDH-183)です。同型艦には先日進水したばかりの護衛艦かが(DDH-184)があり、私はこのクラスの護衛艦の命名法は遺憾だと思っているのですが、そういう政治的なことは一応置いておくとして、高校時代までは海上自衛隊の船乗りとして国防に一生を捧げたいと思っていた人間としては、こういう艦が横浜大桟橋で一般公開していると聞けば、やはり若き日の血が騒ぎましたね。

 今年の夏は例の安全保障関連法案が、憲法解釈を恣意的に曲げてゴリ押しする内閣の手で制定され、こういう艦船の話題を振るのもやや微妙な情勢だったので、しばらく記事にするのを躊躇していたのですが、やはり国を護る武器や自衛隊員に罪はない、その使い途を誤る政治家にこそ万死に値する罪があるのですから、何も遠慮することはないわけです。
 かつて自衛隊を志望していた人間として自衛隊員の気持ちを代弁すれば、国民の多数が望むのであれば、たとえ地球の裏側だろうがイスカンダルだろうが、誇りを持って戦いに臨むことができます。『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌ではないが、
 
期待の人が〜俺たちならば〜
というわけです。しかし現状はそうでなくなってしまった。武器や兵士に先んじて国民を護るものこそ憲法、それが近代民主主義国家の原点であるという厳然たる世界の歴史的事実を、現政権とその支持者たちはいとも簡単に踏みにじってしまった、こんな国のために生命を賭けた仕事をしなければいけないなんて不条理そのものだと思います。

 さて今回いずもが横浜大桟橋で一般公開されていたのは、10月18日に挙行された海上自衛隊観艦式に伴うイベントの一環でした。私はこれまで2009年2012年の2回、観艦式に招待されていますが、今回そのチャンスはありませんでしたので、その代わり…と言っちゃなんですが、横浜大桟橋でこの最新鋭護衛艦に乗艦してみたわけです。

 “護衛艦”もしくは“ヘリ空母”と称する海上自衛隊のこの種の護衛艦かがひゅうがの命名上の問題点についてはそれぞれ別のコーナーに譲るとして、今回は単なる物見遊山の乗艦記…。

 とにかくデカイ…の一言です。これまで乗せて頂いた護衛艦まきなみ(DD-112)やせとぎり(DD-156)とは桁違い、大型エレベーターで飛行甲板に上がると、そこはもう船と言うよりは広場か運動場、ちょっとした運動会など楽々開催できそうです。
 艦首から後方を眺めると艦橋(ブリッジ)が遙か彼方に見える、その艦橋から艦尾を眺めるとこれも遙か彼方に大型ヘリコプターが4機ほど余裕で駐機していました。
 私の直感では、これはもうやはりただのヘリ空母ではありませんな。甲板の材質も非常に硬く、耐熱加工も万全に見えました。つまりジェットエンジンを垂直に噴かして離着艦する航空機の運用は可能だということです。またヘリコプターを公称10数機運用できるということになっていますが、この甲板の広さ、10機や20機なんてものではなさそうですね。右側の写真だけで実はもう5機写っているんです。
 まあ、軍艦というものは外国からなるべく警戒されないように排水量や性能を控えめにサバを読むものではありますが、だったら“いずも”とか“かが”とか旧国名を付けるなよ…って、そういう話は今回はなしでしたね(笑)。

 護衛艦いずもは全長248メートル、護衛艦とはいうものの旧帝國海軍の戦艦や空母に匹敵するサイズです。長さだけで比較すれば、戦艦長門約225メートル、戦艦大和263メートル、真珠湾攻撃に参加した空母赤城249メートル、加賀230メートル、蒼龍と飛龍222メートル、瑞Iと翔Iが250メートル…、ただただいずもの巨体に圧倒されて艦を降りてきましたが、とうとう戦後日本もこういう大艦を保有してしまったのかと、現政権の無軌道と国民世論の無頓着も合わせて不安のタネは尽きません。


         帰らなくっちゃ